モテット「踊れ喜べ、幸いなる魂よ」

k165 第三楽章アレグロ

片栗の

花の

アレルヤ

淋しいぞ

●モーツァルトは、敬虔で信心深いカトリック教徒だったのか、それともそうではなかったのか。これはフリーメーソンとも関連して、モーツァルトの生き方や考え方に直接かかわる興味深い問題である。しかし、表面的な資料や記録をいくら積み重ねても、結局は解決不可能な領域である。間違いなく敬虔なクリスチャンの父母のもとで洗礼を受けたこと。その短い生涯に「レクイエム」を最後の作品として、100曲に近い教会音楽を作曲したこと。しかし、それが信心深さの証明になるのだろうか。晩年の10年間、モーツァルトが教会に行った記録ほとんどない、しかしそのことが、不信心や棄教の証明になるだろうか。モーツァルトの魂の奥底を垣間見ることが出来るのは、つまりモーツァルトの真実は、ただただ音楽の内にある。そしてたどり着くのは、モーツァルトという曇りのない鏡に映し出された、己自身の信不信である。結局人は、モーツァルトを語りつつ、モーツァルトを己程度までに、引きずり下ろす。
●この「モテット」はモーツァルト17歳の1773年1月17日、ミラノのカストラート歌手ラウッツーニのために作曲され、翌日初演された。
●「モテット」は、中世、ルネッサンスを最盛期とする教会声楽曲の名称。時代とともにその形式は大きな変遷を遂げた。モーツァルト時代のカトリック教会における「モテット」とは、教会歴によって規定された歌詞をもつミサや晩課に、必要に応じて挿入されたラテン語による声楽曲のことである。合唱曲が多いが、いくつか独唱曲も残されている。屈指の名曲の例として、モーツァルト晩年の「めでたし、誠のキリストの御身体」フランクの「天使のパンは」などがある。
●「アレルヤ」は「主を賛美せよ」という意味のラテン語。旧約聖書詩篇のヘブライ語「ハレルヤ」に由来する。教会などでは賛美歌に用いられ、喜悦、または感謝をあらわす。
●このモテットの愛聴盤はいくつかあるが、ビブラートを抑えたバロック唱法で歌うエマ・カークビイがベストである。このホグウッド指揮するオワゾリール盤は、他の教会音楽の小品「天の女王」のK108,K127の2曲と、「それ故に大切なことは」K143も、見事な演奏で、私が所蔵する8,000枚のレコードの中の、ベスト100の一枚である。
●季語は「片栗の花」。春に咲く百合科の多年草で、古い名は「かたかご」「からご」。山地の木陰などに多く咲く。百合に似た美しい花なので、「初百合」、花のとき葉がないので「姥百合」ともいう。鱗茎から片栗粉をとり、若葉は代表的な山菜料理となる。

片栗の一つの花の花盛り 高野素十

片栗や自ずと開く空の青 加藤知世子

かたかごの花咲き雪はもう降らぬ 橋本花風

紙本墨画 着彩

33cm x 33cm
1999年